大手損保会社からベンチャー企業、戦略系コンサルファームを経て、共同で立ち上げた企業の役員と並行して複業にチャレンジ中

 

株式会社CURIO SCHOOL Co-founder、 取締役

若松 誉典さん

 

大手損保会社に入社後1年で、変化の波を起こす側になりたいとベンチャー企業に転職。正解がない中で、社会課題と向き合い『ひとつの解』を打ち立てていく活動を経験

 

――これまでのご経歴と現在のお仕事について教えていただけますか?

 

新卒で東京海上火災保険(株)(現東京海上日動火災保険(株))に総合職で入社しました。大学4年生のときに1年ほどインターンをしていたベンチャー企業から誘われてもいたのですが、その当時はベンチャーでのキャリアがあまりイメージできず、内定していた東京海上に入社しました。

 

とはいえ、自分が将来、30~40代になった時に、変化の波を起こす側にいるのと、変化の波に「どう対応しようか」と考えながら動くのとでは、行動や思考の様式が違うと考えたときに、自分は変化を起こす側にいたいと思うようになり、入社1年で第二新卒としてインターンをしていたベンチャー企業に転職しました。

 

戦略系のコンサルティングファームの方たちが立ち上げたベンチャーでしたので、Bain & Companyやマッキンゼー・アンド・カンパニーなどのファーム出身の方の下でアソシエイト、一番下の若手として経営企画室に配属され、メンタルヘルス事業の立ち上げを担当しました。今でいうオープンイノベーションという形でその事業は東京海上との共同事業として立ち上がり、現在、企業が使うメンタルヘルスのサービスとして日本でトップシェアとなっています。ひとつのサービスをうまく形づくるところを経験できました。

 

同時にその時期、ちょうど2000年ごろは金融ビッグバンといって金融規制が緩和されたタイミングだったのですが、いろいろな会社の保険を比較して販売する保険ショップのようなものを立ち上げました。今では当たり前のスタイルになり始めていますが、当時あまりうまく立ち上がらず、2年くらいで事業を撤退させることになりました。それから、会社が上場するときの上場プロジェクトチームの主担当として、会社が一段上のステージに上がるところも主導的な立場で経験できました。以上が20代の経験です。

 

30代に入ってからは、コンサルティング業界に移り、アクセンチュアの戦略グループで、金融系の業界の戦略づくりや保険業界の中期計画策定などオーソドックスなコンサルティングテーマを扱いました。しかし、事業開発とか新規事業をやりたかったので、1年くらいで少し小さめなファームに移り、博報堂や環境省と「チームマイナス6%」というプログラムを立ち上げて、夏の「クールビズ」、秋冬は「ウォームビズ」を推進しました。 加えて、農業法人の設立や地方自治体の次世代の就農する若者を増やす取組や、ビジネスマインドを持った農業系経営者を増やすプログラムのカリキュラムづくりとデリバリー等、環境領域の他、農業系の領域にも関わりました。

 

その他、日本の環境技術を東南アジアの新興国に輸出していくためには、どういうことをやっていけばよいのか?というようなことを経産省とか北九州市と一緒に考えるみたいなプロジェクトもやりましたね。

 

ということで、メンタルヘルスの領域でもコンサルティング業界でも、環境や農業、環境技術の輸出など社会課題といわれる領域で、世界でも唯一の正解があるわけではなく、様々な可能性があって、いろいろな問いと解がある中、「ひとつの解はこうなんじゃないか」というものをはじめに打ち立てていくような活動を中心に仕事をやってきているというのが大きなバックグラウンドです。

 

そして35歳くらいになってから、コンサル会社のように外側から何かアドバイスしていくと関わり方だけではなく、自分自身も事業を立ち上げるプレイヤーとしてやっていこうと思いはじめ、2014~2015年くらいから、ちょうどパラレルキャリアという言葉が出始めた頃ですが、その流行りを試してみようと思って、3~4枚の名刺を持って活動し始めました。今は3つほどに絞っているのですが、基本的には教育領域で、特にデザイン思考みたいなものを使って、新規事業を創ったり、価値創出に挑む人たちを支援することをしています。

 

ひとつはCURIO SCHOOLという会社の立ち上げメンバーの一人になっていて、大企業とZ世代と言われる中高生の若者がコラボして、共に面白い新規事業やサービスを創っていくようなプログラムをつくったり、中高生など若いころからデザイン思考という新しいものを生み出す頭の使い方や行動様式を身に付けて社会に出たときに戸惑うことなく面白がって、未知の課題に取り組んでいくようなスキルセットを養っていくような場を作ろうということで、活動しています。

 

もうひとつは、社会人になってからコンサルティング業界などに新しくチャレンジしたいという方を支援していく仕組みづくりです。転職した後に馴染めなくて辞めざるを得ないような方が出てくるような、今も昔も変わっていない構図があるように思っています。せっかく厳しい面接をくぐり抜けて採用されたのだから、コンサルティング会社できちんと立ち上がっていけるような素地を早い時期から作っておけた方がいいわけですよね。新卒でコンサル会社に行く人は、インターン等で見極められて採用されていくので、入社後にそれほどミスマッチは起きないと思うのですが、中途採用の社会人にとってインターンの機会はないので、入った後のイメージがわかない人とか、自分がどれだけ通用するのかがわからずコンサルティング業界にチャレンジすることができない人とか、入った後に痛い目に合う人がいたりするので、そういう「負」を解消したいと思い、コンサルティングワーク的なものを疑似体験できるプログラムを提供するような事業を今、立ち上げているところです。

 

その他はコンサルティングワークをやっている仲間たちの手伝いをしています。

ゼロからイチをつくることは、人生そのものが反映されている活動

 

――ゼロイチをつくりだしたり、起業する面白さはどんなところにあるのですか?

 

単純にできなかったことができるようになることとかは面白いじゃないですか。 人生そのものが反映されている活動だと思うんです。ゼロイチって。 キャリアもそうですけれど、答えがない中で、正解がない中で考えていきますよね。そこと同じことだと思っていて、そここそが本当にやる価値のあることではないかと。既存のもので出来上がっていて、価値をこのように出していけばよいとわかっていて、それを再生産していけばよいという活動よりも、ここがひとつの解の出しどころではないかみたいなことを考えるときが一番、人や組織のエネルギーや生命力が問われる場所なのではと思っているので、そこをやっていたいという感じなのかなと思っています。

 

 

――お仕事やキャリアで心がけてこられたことは何でしょうか? 

 

できるだけ人と自分を比べないということは心がけるようにしています。 もともと僕の性格上、比べがちなんですよね。そして、「あの人よりできていない」とどんどん自分を責めるタイプなので、できない自分を許す、自分を受け入れることは結構意識的にやっています。自分が他の人と比較しているときは、自分が凝り固まっているので、普段意識しないと聞き取れていない鳥のチュンチュンという声を拾いに行ったりとか、公園の中をうろうろ散策したりしてリラックスしています。

 

 

――サポーターセッションではどんなお話をされましたか?

 

大企業やベンチャー、プロフェッショナルファームでのアドバイザリー的な仕事や事業開発の当事者などの立場や、組織にも属したり、フリーランスになったりした経験の中で、自分がどういう失敗をしたかとか、どうしてそのような失敗になってしまったかということと、今だったらどうするか、みたいなことをお話ししましたね。決して「こうしなさい」というものではなく、「こうしたら失敗するんだ」みたいなこととか、「そういうことって意外と他の人もしているなら、自分の経験もそれほど難しく考える必要はないのかも」というように気を楽にしてもらうようなことを心がけている感じです。

 


 

サポーターセッションは自分にとって内省の場であり、学びのある場。ライフワークとして人にエネルギーを渡していける存在になりたい。

 

 

――サポーターでいることはあなたにとってどんな意味や価値がありますか?

 

自分の内省ですね。リフレクションになっています。 大企業からベンチャー企業への転職もうまくいった話として紹介していますが、実は初めのうちは低空飛行だったんです。パフォーマンス的にも精神的にも。転職直後は、プライドが高すぎて鼻が折れていなかったような時期もありました。

 

そういう失敗を沢山していますが、自分ひとりで経験できる数は少ないと思っています。他の方たちが悩んで直面していること自体が、自分だったらどうなんだろうと考えるきっかけになるし、似たような経験も「あのときのことは正解だったのだろうか?」とか、あるいは「今だったらこうするかも」とは言っているけれど、「本当にそうだろうか?」と自問自答しながら会話しているので、自分に問いかけ、自分を修める場のようになっています。

 

よくある「支援」という言葉だと、上から人を助ける意味が強い感じがしますけれど、どちらかというと一緒に考えている場だと位置づけています。自分にとっての学びのある場で、「同じような局面になったら失敗しないように、こんな風に考えよう」とシュミレーションする場でもあると思っています。 お互いに成長できる可能性、次のきっかけをつかめる可能性があるから、自分にとってライフワークになっている場所だと思っています。

 

僕自身が過去いろんな人からエネルギーをもらって、前に進める経験をしてきているので、僕自身が人にエネルギーを渡していける存在になっていきたいと思っています。そういう意味で、還元していっている場だと思っています。

 

――どんな人に使ってほしいと思いますか?

 

一番有効なのは、何かやることは決まっているのだけれど、踏み出す勇気がないという人が使うのがベストではないかなと思っています。つまり、後押しが欲しい状況の人。そして「迷っている」という言葉が出てくる人は使った方がいいんじゃないかなと思っています。