Coach Interview

コーチ紹介インタビュー

人を支えたい想いから人材育成の道へ。経営幹部研修からコーチングに出会い、フリーランスとして活躍することを決意

 

 

―― これまでどのようなキャリアを歩まれてきたか教えていただけますか?

 

大学を卒業後、本田技研工業株式会社(以下、ホンダ)に入社し、海外営業部門に配属されました。幼少期をアメリカで過ごし、大学でもポルトガル語を学んでいたこともあって、希望していた部署でした。

 

そこで市場分析や契約書の管理、出荷オーダー調整などの業務を経験した後、海外物流部門へ異動になり、二輪車の輸出業務を担当していましたが、大きな組織改編に伴い、再び営業部へ戻りました。

 

物流の細かい流れを若手や中堅社員に説明する役割を担うことになったのですが、営業部での実務経験や知識もあったので、物流関連の細かい相談を受ける仕事も増えていきました。

 

幼少期から困っている人を見ると放っておけない性格で、常に「相手に理解してもらえるように分かりやすく教えるにはどうしたらいいか?」と考えることが得意だったんです。そのうち、物流研修の企画・運営を自ら提案したり、テキストを作成したりするようになり、講師も任せられるようになりました。

 

実は、物流部へ異動したばかりの頃は、転職を真剣に考えていたんです。密かにトレーニーとして海外で働きたいと思っていたのですが、他の同期が選ばれてしまったので、自分がこれからホンダでどんな仕事をしていきたいのか分からなくなってしまった時期でした。

 

それでも、徐々に物流研修の仕事を通じて、次第に自分が本当にやりたいことは「人を支える仕事なんだ」と実感するようになり、人事部に異動したいと考えるようになった頃、タイミングよく人事部への異動が決まり、人材育成のキャリアを本格的にスタートさせることになります。

 

人事部では、はじめに全社の新入社員育成を担当した後、次世代の経営幹部リーダーを育成する研修の企画・運営を担当しました。この研修は、世界各国の選抜された課長・部長クラスを対象にしたもので、進行はすべて英語。研修内容も非常に高レベルで、MBAで学ぶような内容でした。

 

この研修の中で、コーチングと出会いました。コーチングでガラリと変化する受講者に深く感銘を受けたのです。

 

その頃、私は不妊治療を開始し、仕事と治療を両立させるために日々葛藤しながら過ごしていました。そんな中、研修で出会ったコーチのおかげで、自ら退職を前向きに決断することができました。

 

これからは、ホンダの看板に頼らず、リーダー研修で出会ったプロフェッショナルのような方々のように、人材育成の分野で自分の名前一つで活躍できるようになりたいと思い、フリーランスの道を選択することにしました。

 

改めてキャリアを振り返ると、困っている人を助けたい、人を支えたい、という想いが原動力となってきたように思います。その想いは、物流研修やリーダー研修の担当を通して、さらに強固なものとなりました。

 

 


 

人事部の研修でコーチと出会い、コーチングに興味を持つ。不妊治療をきっかけに退職を決断。コーチの言葉に勇気づけられ、自らもコーチを志す。

 

 

―― コーチになろうと思われたきっかけはどのようなものだったのでしょうか?

 

ホンダ人事部に在籍していた頃、アメリカ出張でエグゼクティブコーチのLisaさんと出会いました。Lisaさんは、人を想う熱量で、受講者から絶大な信頼を集めていました。

 

1週間の研修で、受講者の方々が大きく変化していく姿を目の当たりにし、私はコーチングという仕事に興味を持ったんです。

 

帰国後間もなくして、私は不妊治療を始め、治療と仕事の両立は想像以上に大変で、大きな葛藤に苦しんだのですが、

そんな時、Lisaさんは私に何度も電話をかけて、話を聞いてくれました。時には厳しい言葉もかけられましたが、彼女の言葉に勇気をもらったことで、私は自ら退職という選択を前向きにすることができました。

 

Lisaさんが私にしてくれたように、自身の人生やキャリアに迷いや悩みに苦しんでいる人たちをサポートしたい。そんな想いから、私はコーチを志すようになりました。

 

 

―― その後、プロのコーチとして活動されるようになるまでを教えていただけますか?

 

ホンダを退職後にフリーランスコーチとして独立しました。

 

最初は、ホンダ時代の知人や友人、家族からコーチングの依頼を受けていましたが、それだけではいつまでも誰かに甘えているように感じ、自分から行動しなければいけないと考えるようになりました。

 

それから、マーケティングの研究やSNSでの積極的な発信など、自分から行動して、フリーランスコーチとして「志鎌あかね」の名前で仕事をもらえるように努力し始めました。

 

当時は、2人目の不妊治療を再開していた時期でもありました。体調や他の仕事のスケジュールも考慮しながら、毎日10件など、自分でノルマを決めて、自身のサービスを第三者に発信するDMを送信するようにしました。

 

最初はほとんど反応がありませんでしたが、次第にコーチングに興味を持ってくださる方が現れるようになりました。「LinkedInの投稿を読んでいて、一度体験コーチングを受けてみたいと思った」、「転職を検討しており、一度相談に乗ってほしい」など、連絡をいただき、友人・知人以外の方にもコーチング提供ができるようになりました。

 

地道にコツコツと努力を続けてきた結果、現在は、フリーランスコーチとして、コーチングで生計を立てられるまでになりました。

 


 

―― 現在はコーチングを含めてどのようなお仕事をされているのですか?

 

フリーランスコーチとして活動する傍ら、研修講師や企業の次世代リーダー研修の支援なども行っています。

新入社員から50代の管理職クラスまで、研修を通じて様々な受講者と出会ってきました。

 

これまで様々な企業を見てきましたが、会社ごとに雰囲気や人柄も異なり、非常に興味深く感じています。

 

研修内で受講者が発言される内容から、今の会社での課題感やキャリアに対する悩みなどを知ることができます。また、自動車業界以外の業界に関する知識もインプットすることができます。

 

これらの経験は、さまざまな企業や価値観を持つ人たちに対しコーチングをする上で、大変参考になるものとなっています。

 

とはいえ現在は、1on1コーチングがメインの活動です。

 

主なクライアントは、30代から40代の会社員です。若手中堅マネージャーや課長職、部長職の方を中心に、仕事やキャリアの悩みを中心にご相談をいただいております。

 

また、海外駐在員の方にも多くご利用いただいております。アメリカ、コロンビア、ドイツ、インドネシア、ベトナム、台湾、インドなど、グローバル企業で活躍されている方々です。

 

 

 


 

コーチングにおいて、信頼関係の構築、クライアントの主体性尊重、人生全体への視点を大切にしている

 

―― 印象に残っているコーチングセッションやコーチを受けた方の変化について教えてください

 

約3年前から継続でコーチングをしているクライアントがいます。明るく元気でユーモアもある積極的な方です。

 

ある日、非常に声が小さく、萎縮していて、ひどく落ち込んだ様子でセッションにお越しになりました。何に対してモヤモヤしているのか自分でもよく分からない状態でしたので、感情を深く見つめるコーチングをさせて頂きました。

 

感情に向き合うということは、見たくない自分に向き合うということでもあり、時に辛いものとなります。私自身もしっかりと寄り添いながら、共に2人で感情を見つめながら、コーチングを進めていくと、ある時、表情がガラッと変わったんです。

 

「ああ、そうか」穏やかな声でしたが、ご自身の奥底の深層心理に達したのでしょう。「いろいろなことが繋がってきました」と仰り、終了時にはコーチング開始時点とは別人のような表情になり、爽やかでスッキリとしたクライアントさんがいらっしゃいました。

 

"すべての答えはクライアントの中にある"

 

コーチングの大前提であるこの考えを、初めて実感した忘れられないセッションでした。

 

――志鎌さんご自身がコーチングでいつも心がけていることはありますか?

 

コーチングにおいて、私は以下の3つのポイントを大切にしています。

 

ひとつ目は、「信頼関係を築く」ということです。コーチングは、クライアントとコーチの信頼関係を基盤に成り立つものですので、コーチングを行う際には、ありのままの自然体の自分をすべて見せるようにしています。

 

二つ目は、コーチングの大原則である「すべての答えはクライアントの中にある」という意識を常に持つということです。対話を進める中で、クライアントの声のトーンや口調、表情、仕草といった細かな変化も見過ごさないようにしながら、クライアントが本当に求めていることは何か、そのヒントを常に探求しています。些細な変化を相手に共有することで、クライアントの中での新たな気づきや発見に繋がることが多いと思っています。

 

三つめはクライアントの人生を扱うということ。職場の人間関係、転職や起業等、コーチングではさまざまなテーマが出てきますが、クライアントの意識として、今目の前にある問題や課題を解決したい、という想いがコーチングの冒頭では強く出てきます。コーチングでは、もちろん今時点直面している事柄について、クライアントが望むものを手に入れるために対話を進めていきます。ですが、目の前のことだけではなく、その事柄に取り組むことがクライアントの人生にとって、どんな意味を持つのか、大きな視点でそのテーマを扱えるような問いかけを入れることを意識しています。なぜならクライアントには、様々な経験を単なる一経験として終わらせるのではなく、その経験を今後の人生に活かすことで、人生全体をより生き生き自分らしいものにしてほしいという想いがあるからです。

 

 

――よくセッションでなげかける「問い」を教えてください。その理由も教えてください。

 

「そんな未来にしていくために、あなたが今大事にしたいことは何ですか」この問いはよく投げかけています。

 

クライアントからよく言われる私のコーチングの持ち味の一つが、キャリアデザインです。

 

幼い頃からクラシックバレエを始め、現在も続けているのですが、多くの舞台で様々な役を経験してきました。先生から「あなたの踊りを踊りなさい」と何度も厳しく指導され、自らの感性を研ぎ澄ませながら「表現する」ことを繰り返し練習してきた経験が、おそらく活きているのだと思います。

 

コーチングでは、漠然とした未来を色鮮やかに描くことを念頭に置き、クライアントの五感や感情にアプローチする問いかけをしたり、私自身が直感的に浮かんできたイメージを投げかけていきます。そうすることで、クライアントの中でふんわりとしていた理想の未来のイメージが具体的になっていきます。

 

その上で、よく投げかけるのが最初の問いです。理想を描くだけではなく、それを実行に移していくために今何が大事なのか。理想で終わらせるのではなく、現実のものとして実現するために、クライアントに繰り返し問いかけさせていただいています。


 

過去の失敗を糧に、スキルを磨き、エグゼクティブコーチを目指す。また、妊娠・出産で悩む方々を支えていきたい。

 

 

 ―― なぜme:Riseでキャリアコーチをしようと思ったのですか?

 

コーチング資格を取得して約2年間、個人でコーチとして活動してきたのですが、今後さらに成長するために、会社員時代のようにチームで切磋琢磨しながら、夢や目標に向かってチャレンジしたいと考えるようになりました。

 

そんな時、me:Riseのコーチ募集を見つけました。私は直感に従うタイプなのですが、他のコーチ陣のプロフィールや公式noteを拝見したところ、こここそが自分が所属したいコミュニティだと確信しました。自分のこれまでのバックグラウンドや想いと共感する部分が多かったのです。

 

今後は、個人としてだけでなく、me:Riseを通じて、個人では届けることができないお客様にもコーチングを届けたいと思っています。

 

 

―― 志鎌さんから見たme:Riseのよさは何ですか?

 

一番の魅力は、業界・職種経験者へキャリアヒアリングができることです。

 

個人でコーチングを行う中で、転職や起業希望のクライアントを多く担当してきました。コーチングでは、クライアントの理想のキャリアを描くことができますが、具体的な業界や職種などの情報提供は、個人ではサポートできる範囲に限界があります。そのため、クライアントはモヤモヤを抱えることがありました。

 

me:Riseでは、業界・職種経験者が豊富なコーチやサポーターが在籍しており、クライアントの理想のキャリアを実現するために必要な情報を提供することができます。そのため、クライアントはより具体的なキャリアプランを描くことができ、理想のキャリアに向けたサポートをトータルで受けることができるところが他にはないよさだと思います。

 

―― これからの志鎌さん自身はどんなことをしていきたいと思っていますか?夢や目標があれば教えてください。

 

私の目標は、エグゼクティブコーチになることです。

 

コーチングを始めて間もない頃、海外のベンチャー企業の社長様を担当した際に、上手くサポートすることができず、クライアント様にご迷惑をおかけした苦い経験があります。

 

今後は、様々な経験を積み、MBAの取得も視野に入れながら、企業経営に直接関わる方にもコーチングを提供できるスキルを身につけたいと考えております。

 

もう一つの夢は、妊娠・出産で悩む方々の支えになることです。

 

私自身、不妊治療や妊娠6か月の死産という経験をしてきました。救急車で大学病院へ搬送され、点滴に繋がれる日々。生きることはできないと知りながらの通常分娩。そして、母も妊娠9か月での死産を経験しています。

 

そのような経験から、妊娠・出産は女性だけでなく、パートナーのキャリアにも大きな影響を与えることを痛感しました。

 

晩婚化に伴う出産年齢の上昇により、不妊に悩む男女も増えています。また、妊娠・出産は、女性の働き方やキャリアにも大きな影響を与えます。

 

妊娠・出産というライフイベントに関わるすべての人が、自らの生き生きしたキャリアを形成できるよう支援することが、私のコーチとしての夢であり、最大のミッションだと思っています。

 

 

【Profile】

志鎌 あかね

本田技研工業(株)に10年間勤務。海外営業や物流、人事を経験。人事部では新入社員から次期経営幹部候補まで、計約900名の人材育成に携わる。米国のリーダーシップ開発機関や欧州のビジネススクールとも協同。

現在はライフキャリアコーチとして活動中。研修講師や企業の次世代リーダー支援も務める。

プライベートでは不妊治療を経験。直感や比喩を用いた問いかけを通じ、漠然とした将来のイメージを具現化するライフキャリアデザインに定評がある。

 

・ CTI認定プロフェッショナル・コーアクティブ・コーチ (CPCC)

・ 国家資格キャリアコンサルタント

・キャリア・デべロップメント・アドバイザー(CDA)